インド

【エッセイ】バラナシでインド人について行ったらチップを受けとり拒否されたお話

海外旅行先では、人を簡単に信用してはいけない。

インドももちろん例外ではなかった。

“インド人と親しくなったので信じてみたら騙された”なんて話はよく聞く話だ。

私もインドに行くまではインド人からの誘いはガン無視しようと決めていたし、かなり警戒していた。

なのに。

ガンジス川のあるバラナシで出会った彼に、素直についていってしまったのである。

バラナシでボートトリップを

バラナシで絶対やりたかっとこと。

それは、ガンジス川で手漕ぎボートに乗ることだった。

ガンジス川の中でもメインゲートである”ダシャーシュワメード・ガート”に到着すると、自分から声をかけずともボート乗りの客引きが一斉に声をかけてくる。

「ボート!ボート!」
「ボート乗ル?コレイイヨ!安イヨ!」

みんな感心するほど日本語が達者だ。

「誰にお願いしようかな〜っ」
ひとまず、ぐるりと見渡してみる。

ボートノル?アンナイスルヨ!

同い年くらいだろうか。

日本語がペラペラでノリの良さそうな男の子が喋りかけてきた。

いくら?
2人デ1500ルピー。ドウ?
え、高い!1人500ルピーの1000でどう?
ワカッタ!ソレデイイヨ!

……交渉成立!

少し喋っている中で、ノリがよく一緒にいて楽しそうな彼の人柄をかって、彼に頼むことにした。

後からもう一度しっかり調べると、2人で1000ルピーは相場として高い方である。

相場はちょっと超えてしまったが、納得して払ったのだから仕方がない。

・・・

客引きしてきた彼の他にもう一人、ボート漕ぎ担当の彼も一緒に、ガンジス川のボート旅が始まった。

早速案内してくれたのは、火葬場。

画像1

火葬場の火は24時間燃え続けており、煙の数は、火葬している人の数だと教えてくれた。

ガンジス川って死体が流れてるってほんと?
妊婦サン、事故に遭った人は、燃やさずに、そのまま流すヨ。お金がナクテ、火葬できない人もイル

カースト制度が未だに色濃く残るインド。
お金がなくて、火葬できずに亡くなる方も多いのだと聞かされ、とても感慨深かった。

ガンジス川を訪れるまでは、”死体が流れている”とか”汚い”とか、ガンジス川に対してマイナスなイメージしか持っていなかった。

確かにガンジス川は濁っていたし、決して綺麗だとは言えない。

だが、夕陽にキラキラと照らされたガンジス川をみているうちに、不思議と綺麗だと思えるようになった。

画像2

ガンジス川は聖なるスポットとも言われるけど、体中でそのパワーを感じ始めていたのだ。

これはきっと、ガンジス川を訪れた人にしかわからない”魔法”のようなものだと思う。

楽しかったボートトリップ

結論から言って、彼らとのボート旅はとても楽しかった。

インスタグラムにアップするため、いわゆる”映え写真”を撮りたいとお願いすると、私たちが納得するまで、嫌な顔せず付き合ってくれたっけ。

ガンジス川で記念写真を撮りたくて、書初めを見せた時も彼らは興味津々。

書初めは

あけおめをヒンディー語で「नया साल मुबारक हो」

元旦とガンジス川を掛けて「in 元旦川」

と友人が書いてくれた。

「あけましておめでとう」をヒンディー語で読むと「ナヤー サール ムバーラク ホー」と言うらしい。

これがまた難しくてなかなか言えない……。

ナヤサムバラコー?んん?あれ違う?

教えてもらいながら何回もチャレンジしてみるも、なかなか正確には言えず……。

でもこの掛け合いの時間が、とてつもなく楽しかったし、和んだ時間でもあった。

写真の構図もちゃんとわかって撮ってくれるし、ノリもいいし。なにこれ。ガンジス川最高じゃん!

個人でボートを頼むと、”グルになって薪代を高額で請求してくる”なんて話も、事前に読んでいたが、そんなこともなかった。

気づけば私たちは、完全に彼らに心を許しつつあったのだ。

バラナシ、アンナイ スルヨ

ボートから降りる時、彼はそう言ってきた。

「騙されるかも?高いチップ要求される?」

頭の中に一瞬でよぎる”疑念”。

しかし、「彼なら信用できる」と思えたのは、彼の目的がなんとなく最初にわかったからだ。

彼の本業は‟ボートの案内”ではなく、‟シルク屋さん”であるとボートで教えてもらっていた。

ということは、彼はきっとバラナシを案内する代わりに、シルク屋さんで何か購入して欲しいということだろう。

もともバラナシでサリーの購入を考えていた私たちは、せっかくなら彼のお店でサリーを購入しようと思い、彼についていってみることに決めた。

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バラナシの街を案内してもらうことに

ブルーラッシー(ラッシー屋さん)とあなたのサリー屋さんとSUSHI CAFEに行きたい!

そう伝えると

「OK!OK!」と言いながら、バラナシの街案内スタート!

画像1

……が、街中でかわいいスポットを見つけると、すぐ立ち止まって写真を撮る私たち。

バラナシには、かわいい壁やスポットが意外と多い。

1分間隔で立ち止まって写真を撮る私たちに飽きれもせず、ニコニコ顔で付き合ってくれた。

「サドゥーと一緒に写真を撮りたい」と言うと全力でサポートしてくれたっけ。

・・・

彼の人柄が垣間見えた出来事がある。

小さな子供が階段でつまずいた時に、彼はすぐさまその子を助けていたのだ。

『小さな子供を助ける彼は絶対にいい人だ……。』

そう確信した瞬間でもあった。

・・・

彼のおもてなしは、その後も続いた。

ガイドブックにもネットにも出てこない、現地の人だからこそ知るスポットにも連れてきてくれた。

私たちが写真好きだと知ったからこその、おもてなしだった。

画像2

そしてついに、彼のやっているシルク屋さんに到着。

サリーを探していること、欲しいサリーの特徴を伝えると「チョットマッテネ」と言って、どこからかサリーを持って来てくれた。

しかし、持ってきてくれたサリーは簡易的なもので、私たちが想像しているサリーではなかったのだ。

こんなサリーが欲しいんだけど

と写真を見せると

「このお店には置いてナイ」と言われてしまった。

結局彼のお店においてあるサリーは、好みではなく断ることに。

その代わり、ガンジーのTシャツとチャイの茶葉を購入した。

彼に謝ると「It’s OK!Dont worry!ダイジョウブ」と、嫌な顔も怒ったそぶりも見せず、相変わらずのニコニコ顔。

その後も、お手洗いの心配をしてくれたり、行きたい場所へ連れていってくらたり、どこまでも彼は優しかった。

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日本人が集まるSUSHI CAFEへ

夜ごはんを食べに、行きたかったSHUSHI CAFEに連れていってもらうと、彼のことを知っている日本人と出会った。

彼はどうやら日本人旅行者の間では有名らしい。

夕食の間、彼は一緒に食べずに外で待っていた。

「一緒に食べる?」と聞いたのだが「ダイジョウブ!」と言ったので、私たちだけで食べることにしたのだ。

「あいつにチップ渡したんですか?」
近くにいた日本人の男の子が喋りかけてきた。

「渡してないよ。でもすごく親切にしてもらったから渡そうか悩んでるの」と言うと

「渡さなくていいっすよ。勝手に案内してるんだから」と、その男の子は言った。

私たちは、チップをどうするかで迷っていた。

この半日、とっても親切にしてもらったので、気持ちとしてチップを渡したい……。

彼のことは、もうほとんど信用してこともあり、感謝の気持ちを少しでも伝えたかったのだ。

「心ばかりだけど彼にチップを渡そう」

私たちはそう決めた。

チップを渡すも……

夕食を終え、店を出ると日本語がペラペラなインド人が一人増えていた。

そして、その彼は

ナンデ僕タチヲ信用シテクレナイノ。インド人ハ、ミンナ悪イ人ジャナイヨ

と何故か怒っていた。

きっと、レストランで話していた話が聞こえていたのだろう。

案内してくれた彼のことは、ほとんど信用はしていた。

だが、やはりどこかで「信用しきれない。怖い」と言う思いがあり、その思いを夕食時にポロっと話していたのだ。

少しバツが悪かったが、「ごめんね。信用しているよ」と謝ると、許してくれた。

この日宿泊する場所はガンジス川ではなく、そこから1時間離れた空港の近くだった。

あらかじめ伝えていたこともあり、Uberをキャッチできる場所までついてきてくれた。

「バラナシは9時過ぎたら危険ダヨ。早めに帰った方がイイヨ」

そう教えてくれた。

お別れの時、「これ気持ちだから受け取って」と彼にチップを渡そうとすると……

イラナイヨ。チップが欲しいから案内したんじゃナイ。バラナシが好きにナッタ?インド人好きにナッタ?それでOK!

彼は純粋にバラナシ、そしてインド人を好きになってもらいたかったのだろ。

私たちは、たまたま運が良かっただけなのかもしれない。

だけれど、彼のおかげでバラナシの街もインド人も好きになったのは事実である。

海外で信じるということ

海外を旅する上で、人を信じるということはかなり難しい。

疑いたくはないが、どうしても疑わざるを得ないのだ。

何回旅しようと、これは永遠の課題のように思う。

チップという感謝の気持ち

私は彼に教えられた。

日本文化にはないチップ制度に、これまでは‟勿体無いお金”という認識だった。

しかしチップと言うのは、‟お返しの気持ち”なのだと……。。

日本人はきっと、「チップをくれ」と強要されるのが嫌いなのであろう。

‟チップ”という目に見える気持ちの提示が、彼らの生活が少しでも豊かになるのであれば、それはそれで本望である。

 

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